「うつ病になりました」 ~従業員を休職させるときのポイント~
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1 はじめに
メンタルの疾患を訴える従業員が増えてきました。「現代社会はストレスフルなので,うつ病が増えた」と言われることがあります。一方,「野獣に生命を奪われる時代にうつ病はなかった。現代はストレスがなさすぎるので,心に過剰に関心が向きすぎるのだ」と言われることがあります。
どちらが正解なのか。いずれにせよ,従業員が「うつ病」になったときのポイントを見ていきましょう。
2 まず「診断書」
従業員が「うつ病になりました」と訴えたら,まず,主治医の「診断書」を提出してもらってください。
診断書には,①休業が必要か,②もし,休業が不要であれば,就労にあたって配慮が必要かを記載してもらってください。
3 診断書上「休業は不要」
就労継続にあたり,「時短」などの配慮が必要か,本人と話し合います。もっとも,できる配慮とできない配慮があります。ひとくちに「時短」と言っても,「通常1日8時間のところ,当面6時間」であれば可能でしょうが,「当面1時間」となればこれは難しいでしょう。個々に判断する必要があります。
一方,診断書上「休業は不要」とされていても,本人が休みたいと希望すれば,休んでいただいて構いません。この場合,有給休暇などを利用いただくのが一般的でしょう。
4 診断書上「休業が必要」
次に,診断書上「休業が必要」とされた場合について述べます。本稿では,うつ病の原因が「業務外」(つまり,私傷病)のケースについて述べます。 (原因が「業務上」の場合は労災となります。労災については,別の機会に述べます。)
5 就業規則に休職規程はあるか
対応方法は,①就業規則に休職規程がある場合,②休職規程がない・そもそも就業規則がない場合,によって違ってきます。以下,分けて述べます。
6 ②休職規程がない・就業規則がない場合
本人が退職を希望すれば,退職していただいて構いません。難しいのは,「退職したくないが,休ませてほしい」と言った場合です。
まず,有休休暇を利用いただくことが可能です。また,病欠等の制度があれば,これを利用いただくことが可能です。問題はこれらを使い切った後です。
原則論を述べます。私傷病で一定期間就労できないことは,労働契約上の債務不履行にあたります。問題は,「一定期間」です。一週間では短すぎます。3年では長すぎます。では,どのくらい?
ここからは私見です(厳密に区別すれば,債務不履行と評価できる「一定期間」の話と,休職期間として相当な「一定期間」の話は異なります。今回は,休職期間の話をします。)。
一般的に休職規程を有する会社の場合,休職期間は6か月から1年程度とされているところが多いようです。「一定期間」は,6か月から1年程度を目安にすればいいと考えます。
ポイントは,休職させる前に,従業員に対して「一定期間」を伝え,一定期間満了時に就労が不可能であれば解雇することを説明し,合意を得ておくことです。なぜなら,休職規程がないにもかかわらず,休職を認めるということは,元の労働契約を「変更」することにあたるからです。したがって,休職させる前に,休職に関するすべての条件について記載した「休職合意書」を締結します
実際に休職に入られた後は,毎月,病状や状況を書面で報告していただきましょう。私傷病手当金を受け取れる場合は促し,本人負担分の社会保険料を会社に支払っていただきます(これらについても,「休職合意書」に記載します。)。
7 ①休職規程がある場合
休職規程がある場合は,規定にしたがって,休職していただきましょう。休職期間中の留意点は,「6」に同じです。
8 難しいのは,復職の可否の判断
「従業員が休職した後,復職を希望しました。」復職していただいていいのか。復職して,またすぐ,休むのではないか。「休職させるとき」より「復職させるとき」の方が難しいと感じています
これについては,機会をあらためて,述べたいと思います。
9 当事務所にご依頼いただくメリット
当事務所では,「休職合意書の作成」をはじめ,休職にあたって押さえておきたいポイントを確実にサポートさせていただきます。従業員の休職はイレギュラーなできごとです。イレギュラーなできごとこそ,私どもにご相談ください。
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